フラット35に有利な省令準耐火構造とは

今回は、木造2×4や軽量鉄骨造によく用いられ、建築基準法にはない住宅金融支援機構による構造である省令準耐火構造について解説します。長期固定金利融資であるフラット35の担保となる住宅にとって最大の敵は火災です。この火災に耐える性能を高めることを意図した構造についての解説です。

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省令準耐火構造の概要

省令準耐火構造の沿革

省令準耐火構造の沿革を列記した表

○省令準耐火構造は1982年に創設され、創設時の名称は省令簡易耐火構造となっていました。この時の省令とは、住宅金融公庫法施行規則を指します。

○省令簡易耐火構造の創設と同時に、省令の規定をより具体的に示した仕様が当時の住宅金融公庫により制定されました。この時の仕様は、枠組壁工法(2×4工法)の木造住宅を対象としたものです。

○1992年に、名称が省令準耐火構造となりました。建築基準法の簡易耐火建築物が準耐火建築物に改正されたことに伴ったものです。

○2007年、住宅金融公庫が廃止され、(独)住宅金融支援機構が設立されました。これに伴って、現在対応する省令は「独立行政法人住宅金融支援機構の業務運営等に関する省令」および「勤労者財産形成促進法施行令第三十六条第二項及び第三項の基準を定める省令」となっています。

●2009年には、木造軸組工法を対象とした省令準耐火構造の仕様が、住宅金融支援機構により制定されました。これにより、省令準耐火構造の住宅を供給可能な企業が大幅に増大しました。

省令準耐火構造の基準

省令に定められた基準
1)外壁及び軒裏 防火構造であること
2)屋根 市街地における通常の火災による火の粉により、防火上有害な発炎をしないもの
市街地における通常の火災による火の粉により、屋内に達する防火上有害な溶融、き裂その他の損傷を生じないもの
3)天井及び壁の室内に面する部分 通常の火災時の加熱に15分間以上耐える性能を有するもの
4)住宅の各部分 防火上支障のない構造であること

○1)外壁及び軒裏と2)屋根の規定についての具体的内容は、建築基準法関連の規定に定められていますが、3)天井及び壁の室内に面する部分と4)住宅の各部分の規定については、建築基準法等での定めはありません。

○木造住宅のうち、2×4工法と木造軸組工法については、住宅金融支援機構が省令準耐火構造の具体的な仕様を定めています。

○2×4工法および木造軸組工法以外の木造住宅や鉄骨造住宅については、住宅金融支援機構が省令準耐火構造に該当するものとして、プレハブ住宅や工法に対して個別に承認をしています。

壁・天井の15分間耐火仕様の概要

壁・天井の室内側防火被覆材の例(2×4工法)
外壁 厚さ12mm以上の石膏ボード張り
厚さ9.5mm以上の石膏ボード2枚張り
防火構造
間仕切り壁 厚さ12mm以上の石膏ボード張り
厚さ9mm以上の石膏ボード2枚張り
厚さ7mm以上の石膏ラスボード張りの上に厚さ8mm以上のプラスター塗り
防火構造
天井
(上階に床がない部分)
厚さ12mm以上の石膏ボード張り
厚さ9mm以上の石膏ボード2枚張り
厚さ9mm以上の石膏ボード張りの上に厚さ9mm以上のロックウール化粧吸音板張り
天井
(上階に床がある部分)
厚さ12mmの石膏ボード張り
厚さ9mm以上の石膏ボード2枚張り
厚さ9mm以上の石膏ボード張りの上に厚さ9mm以上のロックウール化粧吸音板張り
厚さ12mm以上の強化石膏ボード張り

○上記のほか、野縁・吊り木などの天井構成や下地材料裏面の措置、ボードの留め付け方法などの詳細な規定を住宅金融支援機構が定めています。

○通常の火災時の加熱に15分間以上耐える性能を有するものとして、多く用いられる方法は、石膏ボードによる被覆を行うものです。

○石膏ボードは、石膏を芯材として、両面を紙で被覆成型したボードです。木材ではなく、石膏で出来ているため、特に耐火性に優れています。

石膏ボードの事例を示した写真

●省令準耐火構造では、木材を石膏ボードで覆うことが多くなるため、真壁和室のように構造用木材を室内に顕した内装が行い難くなるデメリットがあります。

省令準耐火構造住宅の探し方

省令準耐火構造であることを使ってフラット35を利用するためには、省令準耐火構造であることのエビデンスとなる書類が必要になります。その書類の探索を売主に依頼するためには、当該物件が省令準耐火構造の可能性があるかどうかを把握しておく方が望ましく、そのための参考となる知識をこの章にて整理しています。

省令準耐火仕様の可能性がある構造・工法

省令準耐火構造の可能性がある構造や工法を列挙した表

●木造の2×4工法(枠組壁工法)の住宅は、省令準耐火構造の創設時から旧住宅金融公庫により仕様が公開されており、2×4工法に対応した会社であればどこであっても省令準耐火構造の住宅が供給出来るため、省令準耐火仕様である可能性が最も高い工法です。

○木造軸組工法の住宅は、住宅金融支援機構により仕様が公開されたのは2009年ですが、これより早く2005年に、(社)日本木造住宅産業協会が省令準耐火構造の認定を受けており、その登録会社に限られますが、これ以降に作られた住宅であれば、省令準耐火仕様である可能性が出てきます。

○木質系プレハブ工法やその他の特殊工法(テクノストラクチャー工法やストロングウォール工法など)の中には、個別に省令準耐火構造の認定を受けた工法があり、それらの工法の住宅にも省令準耐火仕様の可能性があります。

○鉄骨造の住宅については、住宅金融支援機構は省令準耐火構造の公開仕様を制定していませんが、鉄鋼系プレハブ工法の中に、個別に省令準耐火構造の認定を受けた工法があり、それらにも省令準耐火仕様の住宅である可能性があります。

○コンクリート造の住宅は、一般に主要構造部が耐火構造となっているため、この場合は省令準耐火構造でなくとも、フラット35または財形住宅融資(リ・ユースプラス)の利用対象となる住宅の一つに該当します。

○鉄骨造の住宅や木造3階建ての住宅などには、建築基準法の準耐火建築物になっているものもあり、この場合は省令準耐火構造でなくとも、フラット35または財形住宅融資(リ・ユースプラス)の利用対象となる住宅の一つに該当します。

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省令準耐火仕様の外見的特徴

省令準耐火構造の可能性のあるものとないものの外装の特長を例示した写真

○省令準耐火仕様では、隣接地で火災が生じたときに延焼を受けにくくするために、外壁や軒裏は防火構造が必要になります。

○防火構造では、原則的に柱や垂木などの木材は露出しません。したがって、構造体である木材が露出している住宅は、省令準耐火仕様の可能性がないことが一般的です。

○市街地の密集した住宅地では、準防火地域に指定されているところも多く、その場合は一般の住宅でも防火構造などが必要になるので、木材の露出がない外観でも省令準耐火仕様でないことも多いですが、郊外の住宅地の場合は可能性が高くなる傾向があります。

省令準耐火構造の可能性のあるものとないものの内装の特長を例示した写真

○省令準耐火仕様では、室内で火災が生じたときに、他室へ燃え広がるのを遅らせるために、原則として壁や天井を石膏ボードで覆います。したがって、真壁和室のように柱や梁などの木材が室内に露出している部屋がある住宅は、省令準耐火仕様の可能性がないことが一般的です。

○近年の住宅では、真壁和室はコスト高になることもあって、畳敷きの和室でも柱の露出しない大壁和室が多くなっており、内観に構造柱木材の露出がない住宅でも省令準耐火仕様でないことも多くなっています。

○2011年には、(一社)日本木造住宅産業協会および(一社)JBN(旧称:工務店サポートセンター)のそれぞれが認定を受けている省令準耐火仕様にて、木材の顕し(露出)が可能になっています。したがって、これ以降は柱や梁の露出があっても省令準耐火仕様の可能性がありますが、燃え代が必要なために太い木材を使うことになるため、条件は限られたものとなります。

省令準耐火構造の可能性のあるユニットバス天井裏を例示した写真

○ユニットバスの天井裏を点検口から見たときに、天井裏が石膏ボードで覆われていることがあります。この場合も、省令準耐火仕様で作られた住宅である可能性があります。

省令準耐火仕様対応会社名(2×4・プレハブ以外)の新旧対照表

○省令準耐火仕様住宅を探す際の参考資料として、近畿圏にて2009年以前に省令準耐火仕様(一戸建て)に対応可能であった会社の名称の新旧対照表を下記にリスト掲載しました。なお、2×4住宅供給会社およびプレハブ住宅メーカーは除外しています。

○省令準耐火仕様に対応可能な会社をすべて網羅したものではなく、記載した会社が供給する住宅のすべてが省令準耐火仕様となるものでもありません。またリストに記載した会社が供給した住宅がフラット35等の公的な基準に適合することを保証するものではなく、欠陥や瑕疵がないこと等の品質を保証するものでもないことをご留意ください。

旧社名又は施工時社名 現社名 所在地
(株)アールシーコア (株)アールシーコア 東京都渋谷区
(株)アイフルホーム (株)LIXIL住宅研究所アイフルホームカンパニー 東京都江東区
(株)アイフルホームテクノロジー (株)LIXIL住宅研究所アイフルホームカンパニー 東京都江東区
(株)LIXIL住宅研究所アイフルホームカンパニー (株)LIXIL住宅研究所アイフルホームカンパニー 東京都江東区
(株)アイム・コラボレーション (株)アイム・コラボレーション 岡山市北区
アエラホーム(株) アエラホーム(株) 東京都新宿区
(株)アキュラホーム (株)アキュラホーム 東京都新宿区
イシンホーム(株) (株)イシンホーム岡山
(株)イシンホーム津山
岡山県津山市
(株)イシン住宅事業部 (株)イシンホーム岡山
(株)イシンホーム津山
岡山県津山市
(株)ウッディランド (株)ウッディランド 滋賀県甲賀市
エースホーム(株) エースホーム(株) 東京都新宿区
(株)エヌ・シー・エヌ (株)エヌ・シー・エヌ 東京都港区
(株)クレストホーム (株)クレストホーム 神戸市西区
サーラ住宅(株) サーラ住宅(株) 愛知県豊橋市
(株)さつまホーム (株)さつまホーム 大阪府箕面市
(株)三建 (株)三建 兵庫県加古川市
(株)三和建設 (株)三和建設 兵庫県宝塚市
(株)センチュリーホーム (株)センチュリーホーム 茨城県水戸市
(株)創建 (株)創建 岡山県備前市
たいせい住宅兵庫(株) たいせい住宅兵庫(株) 兵庫県川西市
タカミ建設(株) タカミ建設(株) 兵庫県高砂市
(株)たかべホームズ (株)たかべホームズ 兵庫県洲本市
タマホーム(株) タマホーム(株) 東京都港区
(株)デザオ建設 (株)デザオ建設 京都市山科区
(株)トステム住宅研究所フィアスホームカンパニー (株)LIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニー 東京都江東区
ブライトホーム(株) (株)LIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニー 東京都江東区
ゴーイングホーム(株) (株)LIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニー 東京都江東区
(株)中田組 (株)中田組 大阪市生野区
日本電建(株) (大東建設(株)) 東京都中央区
(株)はなおか (株)はなおか 徳島県板野郡北島町
東日本ハウス(株) (株)日本ハウスホールディングス 東京都千代田区
(株)桧家住宅 (株)桧家住宅 東京都千代田区
フォワードハウジングソリューションズ(株) フォワードハウジングソリューションズ(株) 大阪府大阪市中央区
富士ハウス(株) 浜松市中区
三井木材工業(株) 東京都中央区
三井物産ハウステクノ(株) 東京都中央区
名鉄不動産(株) 名鉄不動産(株) 名古屋市中村区
(株)モリシタ・アット・ホーム (株)モリシタ・アット・ホーム 兵庫県姫路市
(株)ヤマヒサ (株)ヤマヒサ 大阪市北区
(株)ユニバーサルホーム (株)ユニバーサルホーム 東京都中央区
(株)ヨークベル (株)ヨークベル 兵庫県伊丹市
(株)らいずほーむ 東京都中央区
(株)レオハウス (株)レオハウス 東京都新宿区
ロイヤルハウス(株) ロイヤルハウス(株) 名古屋市中区

 

フラット35融資の対象物件であるかどうかの判断を後回しにして売買契約を進めることは、買主および売主の双方にとって大きなリスクとなります。売買契約や売出しに先行して判断のための調査を行うことをお奨めします。

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