完了検査済でない物件でフラット35は可能か?

中古フラット35では可能になるパターンもある

フラット35というのは、住宅ローンの一種です。また完了検査というのは、建築物の完成時に建築確認どおりに出来ているかを検査するものです。

新築住宅の場合は、この完了検査に合格しないと住宅ローンを受けられません。したがって金融機関が融資をしてくれないので、住宅購入者は代金を支払えなくなります。

どうしてこんな仕組みになっているかというと、今から20数年前までは完了検査を受けない建築物が毎年7割もあったために、それを改善する施策の一つとして政府から全国の金融機関に要請を行ったためなのです。

最近では、中古住宅の購入の場合でも、完了検査済でない物件は融資の対象としない金融機関が増えてきました。購入者はローンの返済が可能であっても、物件の条件のためにローンが組めず買うことが出来なくなったりするのです。

フラット35は、政府が設立した公的機関である住宅金融支援機構が関与する住宅ローンです。ということであれば、きっと融資対象の物件は完了検査済でなければならないだろうと思っている人は多いはずです。

ところが、現時点においてどうかというと、完了検査済であるかどうかと、フラット35を利用できるかどうかという関係は次の図のようになります。

完了検査済の有無とフラット35の可否の関係を示した図

つまり、完了検査済ではない物件であっても、フラット35融資を受けられる可能性があるということです。

中古住宅のフラット35技術基準は、数多くの項目があるのですが、その組み合わせにもいくつかのパターンがあって、完了検査済でなくても適合証明書が発行可能になるような組み合わせが存在するのです。

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代表的パターンは省令準耐火構造を含む場合

省令準耐火構造のイメージ画像

完了検査済でなくても適合証明書が発行可能になるパターンで代表的なものは、物件が『省令準耐火構造』として確認が出来る場合です。

省令準耐火構造というのは、フラット35のために制定された防火仕様であり、建築基準法のものではありません。このため、建築士であっても省令準耐火構造を知らない人は珍しくないというものです。

なぜフラット35のために特別な防火仕様が定められたかというと、融資の担保物である住宅の一番の敵が火災だからです。

特に一戸建て住宅では、大半が木造又は軽量鉄骨造であり、これらは鉄筋コンクリート造に比べて耐火性が劣ったものとなります。これを補うために耐火性を高めた仕様として省令準耐火構造を定めているのです。

省令準耐火構造は、住宅金融支援機構の前身である住宅金融公庫の時代から作られており、フラット35以前のいわゆる公庫融資を受けた中古住宅にも使われているものがあります。

中古フラット35の技術基準では、省令準耐火構造であるかどうかの確認に『書類のエビデンス』を求めています。すなわち、証拠となる書類が残っていなければ、この基準を使った適合証明は出来なくなるってしまいます。

たとえ現地の建物を調べて省令準耐火構造の特長があったとしても、それを示す書類がなければフラット35の適合証明は出せないという基準になっています。

このため特に軽量鉄骨造プレハブ住宅の場合は、省令準耐火構造等のエビデンス書類の入手がフラット35利用の大きなハードルとなっています。

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現地調査でも可能なのは木質系の耐久性基準

木質系耐久性基準のイメージ画像

2×4住宅のような木質系構造の住宅の場合は、省令準耐火構造等のエビデンス書類が残っていなくてもまだ可能性が残されています。

中古フラット35には木質系の耐久性基準というものがあり、この項目は現地調査だけでも適合確認が可能になっているからです。

木質系の住宅は、コンクリートに比べて湿気に弱く、腐ることがあるという特性をもっています。これは融資の担保物としては好ましいものではなく、その視点からの基準が耐久性基準なのです。

木質系の耐久性基準では、建物の換気に関する性能や蟻害の可能性等について調査するようになっています。調査対象には床下や天井裏も含まれます。

この基準については有難い点が一つあります。それは、築10年を超える物件では基準が緩和されるケースがある点です。耐久性についての10年間の実績を評価できるようにしているのです。

木質系構造の物件では、省令準耐火ではなかったからといってフラット35をすぐに諦める必要はありません。

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適合証明の調査を後回しにするのは危険

フラット35の適合証明書は融資の審査時には必要とされないことが一般的なために、適合証明の調査を後回しにすることがありますが、これは買主や売主の双方にとって大きなリスクとなります。

適合証明書の取得可能性を見込みだけで判断して、ローン審査で融資承認を受けてから調査をした場合に、その見込みが外れて適合証明書が発行できない結果になると、それまでの苦労と時間が無駄になってしまうのです。

特に売主側の立場で見た場合、他の購入希望者との話を止めている訳ですから、もし待ってもらった別の購入希望者が他の物件を選んでしまうと、その取引機会も逃すことになります。

売主側にとっては、所有する物件のフラット35適合証明の結果は、可であれ不可であれ、次の購入希望者との取引に活かすことが可能です。一方、買主のローン審査が承認されなかったという結果は、売主側が次の購入希望者との取引に活かすことは不可能です。

このことから考えると、売主側とすれば適合証明書の調査が先に行われる方が有益であって、調査を後回しにすることの方が不利益になると考えられます。

また買主側から見ても、取得可能性の見込みが外れる可能性が高いのであれば、先に結果を得ておく方が、無駄な時間や労力の発生を抑えることが出来ます。

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では、見込みが外れる可能性は高いのか、それとも当たる可能性が高いのか、どちらなのでしょうか?

見込みで判断しようとする場合、建築士が現地に行かずに、送付された資料だけで見る事前調査の段階だけでの判断による確率以下になると考えられます。

しかし、この段階というのは適合証明に必要な調査全体の構成から見ると、下図に示すうちのAゾーンの範囲内でしかに過ぎません。

適合証明の調査の構成のイメージ図

事前調査が一見可能にみえる書類調査ですら、実際には設計図が大きいために送付できなかったり、また送付した書類に抜けがあったりして、現地で確認せざるを得ないことが多くあります。

そして、A・B・C・Dのどれか一つでも不適合となる調査対象があれば適合証明書は発行できません。

特に不適合が多く出るのはDゾーンです。建物の劣化状況に関する項目が多くあり、一見きれいに見える建物でも基準をクリアできないことが珍しくありません。

建物は日々劣化が進んでいきます。適合証明書の発行が可能であった物件が1週間後には発行不可能になることもあります。

地震や台風に耐えることが出来る建物であっても、劣化という現象は昼と夜の温度変化だけでも進んでいくからです。

したがって、適合証明書を見込みだけで判断して話を進めて行くのは非常に危険と言えます。

売買契約も融資審査も終えて残るは決済だけと安心しているところに、適合証明書の取得が出来ずにすべてが水の泡になるのは買主にとっても売主にとっても非常に辛いことと言えるでしょう。

中古住宅でフラット35の利用を考える場合には、物件の適合証明書発行が可能かどうかの調査を優先して行うことが、買主と売主の双方にとって有益になり、最も重要なのです。

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