リフォームでフラット35の可能性を上げる方法

一戸建て住宅にて、フラット35等の物件検査(中古住宅適合証明)を行うとき、外装リフォーム等がなされた物件では、劣化状況や耐久性基準の検査に通る確率が高くなります。言うまでもなく、購入者が融資を受けやすい物件の方が売却には有利。フラット35に対応したリフォームが、資産価値を高めるリフォームだとも言えます。

リフォームとフラット35適合可能性の関係

リフォームのタイプと検査合格可能性との関係を表した表

○中古の一戸建て住宅の販売広告において、リフォーム済み物件と表示されたものがありますが、それだけではフラット35等の物件検査に適合しやすいものかどうかは分かりません。その住宅のどこをどのようにリフォームしたかを確認することが必要となります。リフォームした箇所や方法が物件検査の適合可能性を向上させるようなものであれば、それは資産価値を高めるリフォームだと言うことが出来ます。

○リフォーム工事には、低下した機能を元の状態に回復することを目的としたメンテナンス系のリフォームと、従前の機能よりも高い機能のものへと向上させることを目的としたグレードアップ系のリフォームとがあります。フラット35等の物件検査と関係があるのは、主にメンテナンス系のリフォームです。メンテナンス系のリフォームは、部材の補修や交換を中心とした工事となります。

○メンテナンス系のリフォームであっても、フラット35等の物件検査の検査項目に関係がない箇所のリフォームであれば、検査合格の可能性を高めることは出来ません。例えば、ドア等の建具の交換は検査項目とは関係がありません。また、一見関係がありそうな水回りの設備機器の交換であっても、給排水管に何ら手をつけていない場合には、検査項目に関係した箇所のリフォームを行ったものとは言い難くなります。

○検査項目に関係がある箇所であっても、その検査項目が経年劣化を伴わないものであれば、メンテナンスを目的としたリフォームを行う必然性がありません。例えば、基礎の高さや床下換気口の設置間隔は、年月が経過したことにより変化するものではなく、これらの検査項目はリフォーム工事とは関連性がないものとなります。

○経年変化を伴う検査箇所であっても、その経年劣化がリフォームによる機能回復が困難なものであれば、メンテナンス系のリフォームによりフラット35等の物件検査の合格可能性を向上させることは望めません。例えば、床や壁の傾斜は、これを是正するためには一般に大規模な改修を必要とすることとなり、いわゆる維持修繕レベルの工事とはならなくなります。

●リフォームによる機能回復が容易に出来る経年劣化の生じる検査対象部位においては、メンテナンス系のリフォームによるフラット35適合性への効果は大きいものとなります。常に太陽光や風雨の影響を受ける外装部分は、何らかの形で経年劣化が生じる箇所であり、特に外壁のシーリング材の劣化や乾燥収縮による基礎コンクリートのひび割れなどは、補修工事による機能回復が容易であり、物件検査での合格可能性の向上が期待できるものと言えます。

リフォームによる間接的効果が期待できる対象箇所

かし保険とフラット35の検査項目の違いを表した表

○フラット35等の物件検査の対象箇所となっていない建物部分であっても、メンテナンス系のリフォームによるフラット35適合性の向上効果(間接的効果)が期待できるものがあります。

○かし保険(瑕疵保証)の検査では、フラット35の検査と同等なものを多く行うほかに、フラット35の検査では行わない箇所においても検査項目を有するものがあります。

○建物の外部のうち、屋根と軒裏については、フラット35では検査項目がありませんが、かし保険においては検査項目が存在し、これに適合するかの検査を行います。またバルコニーの検査のうち、防水層については、フラット35では直下が屋内である場合のみ検査対象となりますが、かし保険では直下が屋外であっても検査対象となります。

●屋根、軒裏、バルコニー防水層に対するメンテナンス系のリフォーム(外装改修工事)は、雨漏り等を抑止する効果があるため、フラット35検査で対象となる別部位(小屋裏等)での適合可能性を向上させることとなり、間接的な向上効果をもっていると言えます。

外装部分の補修(リフォーム)対象箇所例

ひび割れの事例の写真

○フラット35等の物件検査では、ひび割れ(クラック)については、すべてのひび割れが不適合要因になる訳ではありません。割れ幅が0.5ミリ以上のものなど、一定の条件を満たさなければ不適合とはなりません。一方で、1箇所でも不適合条件に当てはまれば、フラット35融資の利用ができなくなるため、外装のリフォームでは十分な確認が必要です。

基礎のひび割れの事例の写真

○外装のリフォームは、施工作業に足場を必要とする屋根と外壁が主な対象となるのが一般的です。このため、基礎のひび割れが補修されずに残っているケースが見られます。水切りの直下(基礎の上部)や床下換気孔の周囲はひび割れが生じやすいので、重点的な確認箇所となります。

外壁のモルタルのひび割れの事例の写真

○外壁のモルタルは、外装リフォームで塗装がなされるのが一般的です。外壁モルタルのひび割れは、窓などの開口部の周囲や出隅・入隅部に生じやすく、ひび割れの補修をせずに塗装をすると、塗装の割れ等が生じやすくなります。

外壁のタイルのひび割れの事例の写真

○外壁のタイルについては、複数枚に連続したひび割れは一般に下地材まで到達または貫通したものとなります。しかし、ひび割れ幅が小さいものは、外装リフォームの際に補修されずに残ることがあり注意を要します。

外壁のサイディングのひび割れの事例の写真

○サイディング張りの外壁では、サイディング板の継ぎ目(ジョイント)におけるシーリング材(コーキング材)の破断や剥離がよくみられる不適合要因です。破断や剥離は、出隅・入隅部などに生じやすく、シーリングの打ち換えをせずに塗装をすると、塗装の割れ等が生じやすくなります。

シーリングの剥離の事例の写真

○窓サッシ等の周囲においても、シーリング材の破断や剥離が生じます。サッシの上側および下側のシーリングは作業がしにくい位置になるので注意が必要です。

グレードアップ系リフォームによる適合可能性向上効果

グレードアップ系リフォームの種類と適合可能性の関係を表した表

○グレードアップ系リフォームでは、建物に新たな機能や従前より高い機能を付加するため、適合可能性が向上する検査項目は、劣化状況以外の基準項目となります。すなわち、フラット35Sの基準、旧耐震物件における耐震評価基準、耐久性基準での向上効果が考えられます。

○フラット35Sに対応するリフォームは、マンションの専有部分におけるリフォームも該当します。

○フラット35Sの検査項目では、現地調査により判定される中古タイプ基準のうち、手すり設置、段差解消、開口部断熱の3つが対象となります。いずれも、フラット35Sの金利Bプランに対応したものです。

●手すり設置は、浴室および住宅内の階段に手すりを設置するリフォームが該当します。階段については、居室のない階(例:屋根裏の物置など)にのみに達する階段は除きます。

●段差解消は、高齢者が利用する室等の床や室相互の出入り口部を段差のない構造にするリフォームが該当します。5㎜以下の段差は、段差がないものとみなされます。浴室およびバルコニーの出入り口や玄関の上がり框等での段差解消は、必須ではありません。

●開口部断熱は、住宅の窓を二重サッシ化またはペアガラス(複層ガラス)化するリフォームが該当します。ただし、トイレ、浴室、脱衣室、および洗面室の窓は該当しません。また、天窓、ルーバー窓、および玄関等のドアのガラス部分も該当しません。

○旧耐震物件においては、改修後の上部構造評点が1.0以上の耐震補強工事が該当します。

○改修後の上部構造評点が1.0未満の耐震補強工事であっても、改修後の建物が住宅金融支援機構の定める耐震評価基準に適合する場合は該当することになります。地方自治体によっては、上部構造評点が1.0未満の耐震補強工事にも補助制度を創設しているところがありますが、補助の基準とフラット35の基準とは内容が異なるので、該当の有無を確認する必要があります。

○耐久性基準での適合率向上については、建物が省令準耐火構造でない等、耐久性基準の検査を必要とする場合のみ効果が生じるものです。リフォームと関係するものとして、小屋裏換気孔(屋根断熱化含む)と床下換気孔が考えられます。

○小屋裏換気孔の設置については、独立した小屋裏ごとに設置されていることが必要です。またフラット35の基準に定める数や配置となっている必要があります。

○屋根断熱化は、断熱材を屋根(野地板下面)に施工して小屋裏と室内が同等の温熱環境となるようにしたものが該当します。独立した小屋裏ごとに施工されていることが必要です。

○床下換気孔の設置については、フラット35の基準に定める配置等となっている必要があります。また、基礎の耐力が確保されていることも必要です。なお、機械式ファン(床下換気扇)を用いて換気量を増やすリフォームは、フラット35の適合率向上効果はありません。

◎フラット35等の物件検査を行うためには、床下点検口および小屋裏点検口が必須です。

 

フラット35融資の対象物件であるかどうかの判断を後回しにして売買契約を進めることは、買主および売主の双方にとって大きなリスクとなります。売買契約や売出しに先行して判断のための調査を行うことをお奨めします。

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