耐震基準適合証明書の最大の弱点とは?

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令和4年度税制改正が国会にて成立すれば、『登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋』については、『住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合』の住宅ローン控除等は、耐震基準適合証明書がなくとも適用となります。以下の記事の内容は、これにより変わる可能性があるのでご注意ください。

証明書の申請者欄は税務署の審査対象

築後20年(又は25年)になる中古住宅を購入しようとするとき、その家屋が住宅ローン控除の対象であるためには、耐震基準適合証明書等が存在する必要があります。

耐震基準適合証明書の大きな特徴の一つは、申請者が売主の方になるということです。しかし、その重要性について認識している人は少ないようです。

融資制度のフラット35適合証明書では申請者が誰であっても構いません。名前は似ていても、ここに大きな違いがあるのですが、申請そのものは単に手続きの一つとして軽く捉えている人が大半です。

しかし、証明書の書式をそれぞれ比べて見ると、フラット35適合証明書には申請者を記入する欄はなく、耐震基準適合証明書には申請者を記入する欄が設けられています。実はこれが大きな違いを生み出します。

つまり、耐震基準適合証明書においては、誰が申請したかということが証明書の有効性に関わる事項だということになります。もし誰でも申請してよいのであれば、証明書の書式に申請者欄自体を設ける必要がないからです。

法定の書式であり、しかもその法律が租税特別措置法であるということは、申請者が税務署の審査対象になるということです。

建築士が証明しているのは、物件の耐震性だけでなく、売主から申請があったという事実も証明の内容に含まれていることを見落としてはなりません。

[参考資料]
国土交通省HP 耐震基準適合証明書様式 記入例(PDF)

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自分にメリットがない申請は記憶に残らない

他の多くの行政手続きでは、その手続きによる受益者が申請者となります。受益があれば申請するのは当然と考えられるので、申請した事実を疑われることは基本的にありません。ところが耐震基準適合証明書のように減税という受益を受けない売主が申請者である場合には、本当に申請したのかどうかを疑われる余地が存在します。

売主が建築士に対して申請を行った場合、この申請自体は口頭でおいても成立します。建築士は、申請があったという事実に基づいて適合証明書の申請者名を記載することになります。しかし、この申請の成立はあくまでも売主と建築士の間の関係であって、関係外の税務署がそのエビデンスを要求する余地は十分に存在しているのです。

ここで注意が必要なのは、口頭での申請はエビデンスが弱くなるということです。例えば税務署から確認の連絡が売主に行った場合に、口頭だったために売主の方が忘れてしまっていて申請した記憶がないという返事をしてしまうと、適合証明書の効力が失われてしまう可能性があるのです。

売主にとっては、耐震基準適合証明書の取得は直接のメリットがないので、積極的な申請の動機は乏しいものです。買主側から頼まれて申請するのがほとんどなので興味もなく、記憶に残らないことは無理のない話です。不動産売買の手続きに関する話はたいていが多忙な合間になされるので尚更です。

税務署が確定申告等で通常は審査の対象としていなくても、申請者に対する意思確認はその気になれば簡単にできるチェックであるため、耐震基準適合証明書の一番大きな弱点とも言えます。この弱点はあらかじめ補っておかねばなりません。

したがって申請にあたっては、口頭ではなく文書によって行うことが証明書の効力を確保するために不可欠になります。本研究所においても申請書として必ず提出していただくようにしています。

 

耐震基準適合証明書の取得を後回しにすることは大きなリスクが伴います。証明書が取得できるかどうかの調査を契約等に先行して行うことは売主と買主の双方にとって大きなメリットとなります。先行調査に最適な適合証明調査業務については下記のページをご覧ください。

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