マンションvs一戸建て*耐震基準適合証明書の全て

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令和4年度税制改正が国会にて成立すれば、『登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋』については、『住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合』の住宅ローン控除等は、耐震基準適合証明書がなくとも適用となります。以下の記事の内容は、これにより変わる可能性があるのでご注意ください。

 

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以下の記事では、耐震基準適合証明書について、マンションと一戸建てでの違いや共通点を解説することで、この証明書制度の全貌を理解できるようにしています。
名称には耐震という言葉が使われていますが、実は租税特別措置法により定められた制度ですので、他の建築関係の制度とは異なり、マンションと一戸建てでの違いが少ないことが特徴です。
このために建築の専門家にとっては逆に理解が難しいものになっていて、特に憲法についての知識が必要とされる点(後述第3章&第4章参照)は大きな壁といえるでしょう。

目次

1.発行メリットに違いはあるか?

1-1 受けられる減税の種類は同じ

住宅ローン控除等の住宅取得減税は、中古住宅では所定の築年数(経過年数基準)を超えると受けられなくなりますが、これを受けられるようにするための制度が耐震基準適合証明書です。

耐震基準適合証明書が利用できる住宅取得減税には、下記のようなものがあり、マンションと一戸建てのいずれも可能です。

登記の時 登録免許税の軽減 国税
確定申告等の時 住宅ローン減税 国税
贈与税の非課税措置 国税
贈与税相続時精算課税 国税
買換時の長期譲渡所得課税 国税
空き家譲渡所得の特別控除 国税
不動産取得申告の時 不動産取得税の減額 地方税

※住宅ローン減税を受けるためには、給与所得者においても初年度は年末調整ではなく確定申告の手続きが必要です。

[参考資料]
国土交通省HP 住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置

国土交通省HP 住宅ローン減税

国土交通省HP 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置

国土交通省HP 居住用財産の譲渡に関する特例措置

国土交通省HP 空き家の発生を抑制するための特例措置

国土交通省HP 不動産取得税に係る特例措置

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1-2 証明書の様式はマンションと一戸建てで共通

耐震基準適合証明書の様式は3種類あり、減税の種類によって違っていますが、マンションと一戸建てでの書式の違いはありません。

・登録免許税の軽減 の場合の様式
  国土交通省HP 建設省住民発32号 別添4(PDF)

・住宅ローン減税
・贈与税の非課税措置
・贈与税相続時精算課税
・買換時の長期譲渡所得課税
・空き家譲渡所得の特別控除 の場合の様式
  国土交通省HP 耐震基準適合証明書様式 記入例(PDF)

・不動産取得税の減額 の場合の様式
  国土交通省HP 耐震基準適合証明書様式(DOC)

1-3 購入時の諸費用が安くなる度合いが違う

登録免許税というのは、簡単に言うと購入した不動産の所有権等を登記するときに登記所で支払う登記料のことです。この登録免許税の減税により購入時の諸費用が安くなります。

登録免許税の算定は、建物の構造(登記簿上)によって変わってきます。木造や軽量鉄骨造よりも鉄筋コンクリート造の方が高く算定されます。分譲マンションは鉄筋コンクリート造が多いので、木造や軽量鉄骨造が多い一戸建てよりも諸費用が安くなる度合いが大きくなる傾向があります。

以下のシミュレーターで概ねの減税効果を試算できます。

○物件の構造

○物件の床面積
平米(マンションは専有部分)
○物件の築年数

○住宅ローンの借り入れ額
< 登録免許税 減税額 試算結果 >所有権移転登記 減税額

抵当権設定登記 減税額

1-4 住宅ローン減税により毎年の所得税が10年間安くなるのは同じ

住宅ローン減税は、住宅の購入時に住宅ローンを利用した場合に受けられる減税措置です。借入残高に応じて所得税の減税が10年間受けられ、減税額の総額は最大で200万円になることもあります。(消費税がかかる物件の場合は、期間や減税額が異なることがあります)

住宅ローン減税(住宅ローン控除)にマンションと一戸建てによる違いはありません。

毎年の減税額は、各種の条件により変わります。下記リンクでは簡易計算シミュレーターが利用できます。

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1-5 地震保険の保険料の割引を受けられる場合があるのは同じ

地震保険の建築年割引は、昭和56年(1981年)6月1日より前に新築された建物では受けられませんが、耐震基準適合証明書がある場合には同等の割引を受けられるようになります。

地震保険の建築年割引にマンションと一戸建てによる違いはありません。

2.対象となる物件条件に違いはあるか?

2-1 減税要件の床面積の測り方が少し違う

住宅ローン減税等の適用要件は床面積50平米以上となっていますが、これは登記簿上の面積になります。一戸建ての場合は建築確認上の面積も登記簿上の面積も壁心面積で計算します。

マンションの登記簿の床面積は内壁面積で計算されていますので、壁心面積で計算した場合よりも小さくなります。 マンションの広告では壁心面積で表示されていることが多く、広告では50平米以上あっても登記簿では50平米未満の場合があるので注意が必要です。

内法面積と壁心面積の違いを示した図

なお物件が店舗等併用住宅の場合は、床面積(専有部分)の1/2以上(登録免許税軽減は90%以上)が居住用であることが必要になります。

[参考資料]
国税庁HP 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

2-2 減税のために必要となる築年数が違う(?)

減税のために中古住宅に耐震基準適合証明書が必要となる築年数(経過年数基準)は20年ですが、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物は25年になります。

マンションが25年と言われているのは、分譲マンションの構造が一般に鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造のいずれかだからです。近年、木造のマンションが建設され始めましたが、現在の制度では経過年数基準は20年が適用されます。

一戸建てでも鉄骨造は25年ですが、プレハブ住宅に多い軽量鉄骨造は20年です。構造は登記簿に記載されたもので判断します。「木・鉄筋コンクリート造」と記載されている場合は、「鉄筋コンクリート造」ではないので20年となります。

構造(登記簿) 経過年数基準
木造
軽量鉄骨造
その他
20年
鉄筋コンクリート造
鉄骨造
鉄骨鉄筋コンクリート造
25年

[参考資料]
租税特別措置法施行令第26条第2項

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2-3 築後の経過年数を引渡し日で判断するのは同じ

住宅ローン減税等において耐震基準適合証明書が必要となるのは、築後の経過年数基準の日を超えた物件を取得した場合です。ただし注意しなければならないのは、取得日とは何の日で、何の日が築20年(マンション等では25年)を超えたかどうかです。

例えば木造の一戸建ての場合、売買契約の契約日が築20年を超えている場合は、当然ながら必要となります。では、築20年を超えないように駆け込みで築20年になる前に契約した場合はどうなるでしょうか。

契約日が築20年になる前であっても、引き渡し日が築20年を超えれば、耐震基準適合証明書は必要となります。引き渡しがなされて初めて取得したことになるからです。これは見落としがちですので注意してください。

基準経過年数と契約日と引渡日の関係を耐震基準適合証明書の要否から示した図

物件の引き渡し日が築20年より前であれば、耐震基準適合証明書がなくとも住宅ローン減税等を受けることが可能になります。ただし、この引き渡し日が契約書に記載されたものと登記簿に取得日として記載されたものとが異なる場合は、登記簿のほうになります。契約書はあくまでも予定日だからです。

契約時点で予定している引き渡し日が、築20年を超える日に近い場合は要注意です。何かの事情で引き渡しが遅れて築20年を超えてしまった場合、住宅ローン減税等を受けるために耐震基準適合証明書が必要になります。

こうした場合に、決済と所有権移転は予定どおりに行って引渡しだけを先に延ばすという提案が出てくることがあります。しかしこれは事前に税務署に確認する必要があります。所有権移転により引渡しがされたなどと判断されることがあるためです。

対策のためには、事前に耐震基準適合証明書の準備を進めておくしかないと考えられます。これらの点については、マンションと一戸建てに違いはありません。

[参考資料]
国税庁HP 法令解釈通達 41-6

国税庁HP その他法令に関する情報

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2-4 マンションとプレハブ一戸建てでは完了検査合格が必要

マンションとプレハブ一戸建てでは、新耐震設計基準による完了検査に合格していることが事実上必要になります。

新耐震設計基準とは1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認にて採用されている基準です。建築基準法では建築確認を受けた物件は竣功時に行政等による完了検査を受けることとなっています。

新耐震設計基準での完了検査に合格していない物件の場合、耐震基準適合証明書を発行するためには、通常の耐震診断を行ってその結果によっては耐震改修工事をするなどのことが必須となります。費用や時間を大きく要し、マンションでは管理組合の総会決議も行わねばなりません。

またプレハブ一戸建てでは通常の耐震診断はハウスメーカーしか出来ず、かつ新築時のデータが残っている必要があります。こうしたことから売買時の減税のために耐震診断を行うことは事実上困難となります。

住宅売買に伴う減税を目的とした耐震診断としては、当研究所が用いている新耐震基準による耐震診断が可能です。この診断法であれば、マンションやプレハブ一戸建てでも可能になります。ただし、その実施のためには新耐震設計基準での完了検査に合格していることが必要となります。

完了検査に合格しているかどうかについては、完了検査時に交付された検査済証により確認します。検査済証がない場合でも建築確認台帳記載事項証明書等により確認することが出来ます。

建築確認日と完了検査日と新耐震設計基準施行日との関係を示した図

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3.申請者になれる条件に違いはあるか?

3-1 引渡しより前に証明書の申請が必要なのは同じ

ローン控除等の住宅減税は、耐震基準に適合する旨の証明書が付いた物件を取得することが適用要件です。この要件は、憲法第84条にて定められている租税法律主義により、納税者に課税の予測可能性を保証するために設けられたものであり、耐震基準適合証明書にとってもっとも重要な規定です。

適用要件の基準となる取得の日の判定は引渡しの日で行っています。これにより当然に耐震基準適合証明書の申請は引渡しより前になります。

適用要件の例外として、引渡し後すぐに耐震改修工事を行い、工事完了後に耐震診断をして証明書が発行された場合に、これを引渡し前に発行されたとみなす制度があります(次項参照)。しかし、この制度においても申請は引渡し前に行わねばなりません。

マンションでは、取得住戸と同じマンションの別住戸が既に耐震基準適合証明書の発行を受けている場合がありますが、その場合でも取得住戸の証明書の申請及び発行が必要であり、これらはすべて引渡し前に行わねばなりません。

同じマンションであれば既に証明済みではないかと思う人もいますが、耐震基準適合証明書はその法定の様式から明らかなように住戸単位の発行であって、マンション単位の発行ではありません。したがって同じマンションの別住戸で証明書が発行されていても、それ以外の住戸では耐震基準への適合は証明されていないからです。

以上のことから、引渡しより前に証明書の申請が必要なのは、マンションと一戸建てのどちらも同じということになります。

[参考資料]
日本国憲法第84条

国土交通省HP 耐震基準適合証明書様式 記入例(PDF)

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3-2 所有者の同意なしで申請できるのは法定様式が使える場合だけ

耐震基準適合証明書の様式は、租税特別措置法または地方税法から定められており、租税法の法定様式です。我が国では憲法第84条により租税法律主義が採られており、租税法規の条文は拡張解釈は原則的に禁じられ、文理解釈により厳格に適用しなければなりません。平たく言えば、法規に書いてあるとおりにしか出来ないということです。

法定の証明書様式には申請者欄があるので、申請者として正当かどうかのチェックが必要なのは自明になります。しかし、その条件は法規上で明文化されておらず、また同意書や委任状などが法定様式として定められていないので、証明書の申請者が所有者以外の場合は単純に法規に従いながらの証明書作成が出来ません。したがって申請者は所有者であることが原則となります。

証明書の申請は引渡しより前になるので、申請者は売主ということになります。ただし法定の申請書として家屋取得(予定)者を申請者とする様式があるので、これが使える場合に限り、買主のみで申請することが出来ます。すなわち買主が取得後すぐに耐震改修工事をして適合証明書の発行を受ける場合は、買主が引渡し前に売主の同意なく申請することが可能になっています。

マンションでは買主が耐震改修工事をすることは事実上困難なので、この制度を使えるのは一戸建ての場合だけということになります。

これ以外で買主が申請しようとする場合、例えば売買契約の内容として買主を適合証明の申請者に定めようとする場合や売主の委任や同意によって買主が申請者になろうとする場合などは、税務署等にその可否や契約書その他の文書の作成方法も含めて確認が必要です。

なお、売買契約時に耐震基準適合証明書の申請についての条項や特約を設けなかった場合は、売買契約書の協議事項の条項に従うことも必要となります。

一般には手続きが一番簡便になる方法、すなわち買主からの依頼によって売主が申請者となる方法が使われます。これらのことはマンションと一戸建てで変わりません。

一般的な証明書発行の手続きを示した図
一般的な証明書発行フロー図

[参考資料]
最高裁平成27年7月17日判決 判例タイムズ1418号(PDF)

最高裁昭和48年11月16日判決 民集27巻10号1333(PDF)

国土交通省 中古住宅取得後に耐震改修工事を行う場合における住宅ローン減税等の適用について①(PDF)

国土交通省 耐震基準適合証明申請書・仮申請書 様式 記入例(PDF)

建築士法第21条の3、第21条の4

民法第644条

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3-3 所有者全員の申請が原則なのは同じ

物件が共有されていて所有者が複数である場合、所有者全員の申請が原則です。租税特別措置法または地方税法には共有者の一部による適合証明申請の規定や、申請に必要な同意の割合の規定がないためです。同意書や委任状などの法定様式も定められていません。

証明書の法定様式は、申請者一人に対応したものであるため、申請者の数だけ証明書が発行されることになります。なお様式が申請者一人の対応だからといって、共有者の一名が単独で申請できるとの判断は出来ません。単独で出来るとされる保存行為は所有物の価値を変えないことを前提としますが、その前提は住宅減税制度の趣旨と矛盾が生じる可能性が考えられるからです。

また共有の場合に対しても、共有者全員の申請が出来ない場合や、共有者の一人が代表して申請しようとする場合は、税務署等にその可否や契約書その他の文書の作成方法も含めて確認が必要です。

なお、売買契約時に耐震基準適合証明書の申請についての条項や特約を設けなかった場合は、売買契約書の協議事項の条項に従うことも必要となります。

マンションの場合は共用部分を他の区分所有者と共有していますが、法定の証明書様式では共用部分を申請対象に出来なくなっており、また専有部分の適合証明の結果が他の区分所有者に影響を与えることはないので、証明書の申請に関しては他の区分所有者の同意は必要とせず、すなわち一戸建ての場合と同じ扱いとなります。

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3-4 調査実施においては居住者や管理組合の同意等が必要

物件に居住者がいる場合は、家屋調査に伴う立ち入りへの同意が必要になります。またマンションの場合は、敷地や共用部分への立ち入りや保管書類に対する閲覧について管理組合の同意が必要になります。

適合証明書の申請に対しては所有者以外の居住者や管理組合の同意は不要なのですが、証明に伴う調査の実施については同意が必要となるので、この点においてはマンションと一戸建てで違いが出てきます。

なお、証明のために耐震診断を行う場合、通常の耐震診断では結果によって耐震改修工事が必要となることを懸念する人が出てくるのですが、当研究所で行う新耐震基準による耐震診断は耐震改修工事の要否を出さないものとなっています。

また瑕疵(かし)保険で用いられるインスペクション(既存住宅状況調査)とは違って、雨水の侵入に関する項目の検査は行わないため、耐震性とは関係のない項目のために低い評価がなされるおそれもありません。

[参考資料]
国土交通省 既存住宅状況調査方法基準の解説 P5-14(PDF)

4.調査内容に違いはあるか?

4-1 書類調査は必要だが家屋調査には含まれないのは同じ

耐震基準の適合を証明するために必要な調査は、現地調査と書類調査の双方です。現地調査では建物の現在の状況を調査し、書類調査では建物の建築時の状況を主に調査します。これらは耐震改修促進法の規定に基づいて行います。

一方、証明書の作成は租税特別措置法に基づいて行います。この際、憲法第84条による租税法律主義を考慮しなければなりません。租税法規では租税法律主義により文言の拡張解釈が禁じられており、文理解釈を用いて言葉の意味を厳密に解釈する必要があります。このため「調査」の対象範囲に注意が必要になります。

耐震基準適合証明書の様式に記載されている「家屋調査」は現地調査のことを意味します。通常の言葉の用法から意味を確定する文理解釈によれば、「家屋調査」とは家屋そのものの調査のことになります。書類調査は家屋そのものの調査ではないので「家屋調査」には含まれません。現地調査と書類調査を行った日が違う場合は、「家屋調査」の日付として現地調査の日付を記入することとなります。

また、もし書類調査を最後に行った日を家屋調査日として記入できるとすると、2年ごとに書類調査の実施を繰り返すことにより現地確認なしに永遠に適合証明書を発行することが可能になるという矛盾が発生します。このことからも「家屋調査」に書類調査を含まないことは明らかです。

証明書の書式に「家屋調査日」と「証明年月日」のそれぞれを記入する欄があることも、「家屋調査」に書類調査を含まないためです。また「家屋調査日」が耐震診断をした日を意味しないことも同様です。以上のことは、マンションと一戸建てで共通しています。

調査対象の分類図
調査対象の分類図

4-2 マンションでは書類の事前調査が難しい

書類調査で対象となる書類は、登記事項証明書、設計図面、建築確認済証、検査済証等です。検査済証がない場合は建築確認台帳記載事項証明書等を用います。

一戸建ての場合は、設計図面をコピーする等して建築士に送付することで事前調査が可能になります。

一方マンションの場合、設計図面が大きく、枚数も多いためにコピーすることは困難です。またコピーのために保管場所から持ち出すことは管理組合の了承を得るのが難しいものとなっています。

このためマンションの書類調査の大半は、現地調査の際に併せて行うのが一般的です。

4-3 マンションでは専有部分と共用部分の調査が必要

耐震基準に適合していることを証明するためには、耐震診断が必要になります。マンションの場合、当該住戸だけで耐震診断を行うことは出来ません。建物の棟全体で行う必要があります。

耐震診断は棟全体を対象としますが、全ての住戸を調査することは通常行いません。共用部分から行う調査で耐震診断は可能です。

ただし、当該住戸の専有部分だけは必ず現地調査が必要です。法定の証明書様式の「家屋調査」がマンションでは専有部分の現地調査を意味するためです。マンションの場合、登記簿で家屋番号が付されているのは区分建物すなわち区分所有法上の専有部分だからです。

共用部分は専有部分以外の部分であるため、共用部分を調査しても専有部分を調査したことにはなりません。専有部分の現地調査を行わなかった場合、「家屋調査日」の欄が記入できないため、証明書の作成が出来なくなってしまいます。

なお専有部分の調査としては、リフォームによる固定荷重の増加がないことを確認するなどが必要となります。

[参考資料]
不動産登記法第2条第21号、第22号

不動産登記規則第116条

区分所有法第2条第3号、第4号

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4-4 耐震性能に関係する項目のみの調査であるのは同じ

建物の調査においては、日常利用の範囲内で出来ない下記のような調査は行いません。
・取り壊しを伴うもの
・屋上や地下ピット等の通常立ち入り出来ない場所で行うもの
・マンションの他の居住者の生活に支障が生じるもの

建物はすべてが調査対象ではなく、柱・梁・外壁等の構造耐力上主要な部分です。構造耐力に関係のない部分については調査対象とはなりません。雨水の侵入に関する項目の検査は行わないため、マンションと一戸建てのいずれにおいても、耐震基準に適合する旨の証明書が発行される確率は、インスペクションを用いる瑕疵(かし)保険よりも高くなります。

5.発行までにかかる日数に違いはあるか?

5-1 共有の物件は申請に日数がかかるのは共通する

耐震基準適合証明書の申請は、共有の物件では所有者全員の申請となります。共有者の数が多いほど時間がかかることになります。

マンションの場合は共用部分を他の区分所有者と共有していますが、共用部分は耐震基準適合証明書の対象に出来ないので、当該専有部分の共有者だけとなります。したがって一戸建ての場合と同じ条件となります。

5-2 マンションは書類調査の日程調整に日数がかかることがある

マンションの建築関係書類を保管しているのは管理組合になります。しかしその保管場所はマンションによって様々です。

一般に書類の保管場所は、マンション内の管理事務所や倉庫であることが多いです。とはいえ、すぐに閲覧したりコピーできるとは限りません。規則で定められた許可手続きが必要な場合があり、許可が得られるまで何日も待つことがあります。

保管場所がマンション内ではない場合もあります。管理会社の本社であったり、新築時の施工会社や設計会社がいまだに保有しているケースもあります。こういうケースでは、書類がどこにあるのか不明であったり、そもそも存在するのかどうかすら分からないことが珍しくありません。

一方で管理会社に管理を外部委託していないマンションもあります。こうした自主管理のマンションでは、管理組合の理事長やその他の役員の人が自宅に保管している場合があります。役員が持ち回りの場合は誰が保管しているか分からなくなり、その特定に時間がかかることもあります。

このようにマンションの書類調査は、一戸建てに比べて日程調整に時間がかかるのが一般的です。

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5-3 一戸建てでは補修の日数がかかることがある

一戸建てでは建物の現地調査を行った結果、不具合部分を補修をすれば適合証明書が発行可能になるケースがあります。

この場合は補修後に再度現地調査を行って、補修の出来具合を確認した上で発行することになります。ただし物件の引渡し前であることが必要です。

補修は工事着手までに日数がかかることも多いので、証明書発行までの日数に大きな影響を与えることがあります。

5-4 別住戸で証明書が発行済みならば一戸建てと同条件になる

同じマンションの別住戸で耐震基準適合証明書が発行済みで、かつ証明したのが同じ建築士ならば、共用部分の書類調査は別住戸のものを活用することが出来ます。この場合ならば一戸建てと日数の条件は大きく変わらなくなります。

専有部分の現地調査は租税特別措置法上から省略は出来ません。また共用部分の現地調査についても、専有部分と同じ日に行わねば証明書の有効期間との関係上好ましくありません。

結局、証明書発行済みのマンションであっても、発行に要する日数を大きく短縮することは出来ないことになります。

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耐震基準適合証明書の取得を後回しにすることは大きなリスクが伴います。証明書が取得できるかどうかの調査を契約等に先行して行うことは売主と買主の双方にとって大きなメリットとなります。先行調査に最適な適合証明調査業務については下記のページをご覧ください。

柔軟な課金システムの調査業務はこちら

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